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ヒトイヌ・マンション ( 管理人バージョン)

冒頭ついでに、新春向けな冒頭も掲載します。
以前、Twitterでやりとりしたヒトイヌマンションがベースで、何パターンか試し書きしたひとつです。

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 桜の吹雪が舞う中、俺は新居兼仕事場となるマンションの前に立っていた。
 目の前に建っているのは円柱状の独特な外観をしたマンションで、高さは五階程度と高くないが横に広い印象を受ける。
 広い駐車場の真ん中にドンと建っている様は、小さな野球場をイメージしたら分かりやすいだろう。

「思ってた以上に豪華な造りだな……大学でたての俺なんかが本当に管理人でいいのかよ」

 先日まで地方の三流大学に通っていた俺の元に、急逝した祖父の弁護士だという美女がやってきたのが半年前だった。
 二十代後半と弁護士としては若い女性だったが、無駄のない動作からも有能なのがわかった。
 ただ端整な顔立ちで隙のない感じから、少し近寄りがたい雰囲気をもっているのが残念だった。
 その彼女の話では、父方の祖父がこの俺に財産を遺してくれていたということだった。
 だが、両親は祖父のことを嫌っており長い間連絡すらとっていなかった。同然、俺自身も会った記憶もない人物で、正直に言えば祖父と言われても顔も思い出せずにいた。
 とはいえ、財産が貰えると聞かされれば興味を惹かれてしまうのは当然だろう。だが、彼女から聞かされたものは、俺のイメージしていたものとは少々異なるものだった。
 遺産の内容は、マンション一棟とその周辺の結構広い土地で、地方都市の郊外に建つとはいえ売ればかなりの額になるものだった。
 売らないにしても月々の家賃や管理費だけでも結構な収入で、就職しないでも裕福な生活を過ごせそうだった。
 だが、もちろん甘い話には裏があり、この遺産を受け取るにも条件があった。

「マンションに住み込みで二十四時間三百六十五日の間、管理人をするのが必須条件。その間にマンション外から人を入れるのも雇うのは厳禁。一年の間に住人全員から認められないと遺産を受け継ぐ権利はなしと判断されて全て没収って……随分と一方的でガチガチな条件だなぁ、軟禁状態で休みなく働くって、どんな罰ゲームだよ」
「嫌でしたら辞退していただいても結構です。ただし、じょうけんを満たせして正式に遺産を引き継がれたら、あとは売却されるのも貴方様の自由です」

 美女弁護士が意味ありげに微笑むのが妙に気になったが、就職活動が難航していた俺には目の前で提示された家賃収入が魅力的すぎた。

(一年間だけ頑張れば、あとは代わりの人を雇って、家賃収入生活で悠々自適なライフが待っている)

 そんな目論見のもと、俺は彼女が提示した条件を飲むことにした。

『ヴィラ・シャルダン・犬飼』

 それが目の前のマンションの名前だ。「フランス語で小さな庭を意味する」と美女弁護士は説明してくれていた。
 驚いたことに彼女も住人のひとりで、最上階に住む関貫 静香(かんぬき しずか)だった。
 俺が到着した頃には引っ越し作業は終わっており、彼女は俺に鍵を渡すと早々に自室へと戻っていってしまった。

「なんだろう、ソワソワして落ち着かない様子だったけど……まぁ、いいか」

 俺も多くない荷物の整理のため、厳重なセキュリティを抜けて新居となる管理人室へと向かった。
 一階は管理人室兼俺の住居の他は共有スペースとなっていた。フロアは天井の高い豪華な造りで、大理石の床に深紅の絨毯がひかれている様は、さながら高級ホテルのようであった。
 圧巻なのがマンション中央を貫く吹き抜けで、天窓に配置されたミラーがAI制御で太陽光を降り注がせていた。
 その吹き抜けの周囲に螺旋状に配置されたスロープがあり、随分とバリアフリーが行き届いている印象だった。
 吹き抜けの床部分は強化ガラスになっていて、その下には地下庭園まで備えてあった。

「あら、新しい管理人さん?」

 不意に声を掛けられて振り向くと、そこにはテレビで見慣れた女性が立っていた。
 今もっとも人気のある若手ニュースキャスターの五十嵐 楓子(いがらし ふうこ)だった。
 国立大学の経済学部を首席で卒業した才媛で、在学中はミスキャンパスに輝き、モデルとしても活躍したこともある女性だった。
 輝かんばかりの美貌に圧倒されていると、ジロジロと俺を見詰めて値踏みしているいうだった。

「まぁ、外見はギリギリ合格かな。あとは働き次第よね。ねぇ、来週末にでもドッグランを予約したいの、あとリクエストを入力しておくから、よろしくね」

 それだけ言い放つと、スタスタと正面ゲートから外出していった。颯爽と去っていく後ろ姿だけでも見惚れるには充分の価値があった。

「……ドッグラン? 地下庭園のことかな?」

 業務に関しては祖父が残した資料があるという話だった。管理人室に入った俺は、祖父が使っていた書斎を漁り、そこに残されたファイルを端から目を通すことにした。
 祖父は随分と几帳面な人物だったらしく、戸棚に整頓されたファイルが隙間なく並んでいた。
 その中から住人名簿を見つけて手に取ってみた。
 そこには住人の写真入りで詳細な情報が書かれていたのだが、どの入居者も美人ばかりで女優やモデルなど職業もそうそうたるもので圧倒された。
 ただ、そこに書かれている情報に目を通していった俺は、すぐに眉をひそめることとなった。
 各住人のスリーサイズや食の好みなどが書かれているのはまだわかる。会話などしているうちに知ることがあるかもしれない。
 だが、性癖や快楽のツボ、男性経歴まで事細かに書かれていると、もう犯罪の匂いしかしなかった。
 そこにはもちろん、あの美女弁護士の情報もあり、駄目だと思いつつも読んでしまっていた。

504号室住人 関貫 静香。28歳独身。
重度のマゾヒストで物扱いされ、貶められることでマゾのスイッチが入る。
性感帯は乳首とアナル。特にアナルを責められるのが大好きで、浣腸の後に責めると潮を吹いて泣いて喜ぶ。
貞操帯の愛好家で、鍵はSIZU-03として管理。
月末に家賃を手渡しされる時に清掃と施錠確認を必ず行う。
首輪をしているのが要求サインである為、その場合は事前に登録されたリクエストを実行した後に、中庭にて四十八時間のヒトイヌ管理にて牝犬扱いをすること(リクエスト、飼育方法の詳細はそれぞれ管理サーバーの情報を参照)。
尚、乳首にピアスを使用している為、スーツ着用の際は引っ掛けないように注意すること。

 そんな事が書かれているのだが、クールビューティーを絵にかいたような美女がマゾヒストだとは、にわかに信じられなかった。
 だが、それが事実だとすぐにわかることとなった。

ーーピンポン

 呼び鈴が押されて玄関を開けると、そこには関貫 静香が立っていた。
 先程までと同じストライプ柄のスーツ姿で手には封筒を持っていた。
 家賃が入っていると言われて差し出された封筒を玄関先で受け取ったのだが、それでも彼女が立ち去る気配がなかった。
 少し俯き加減の彼女は、なにかを期待する眼差しを向けていた。なぜか耳が赤く染まっており、腰を左右に揺らしているのがわかる。
そんな彼女の首筋に、赤い首輪がはめられていることにようやく気がついた。

(おいおい、まさか、あれに書かれていたのは本当なのか?)

 今の状況に戸惑ってしまう俺だが、クールな美女が見せる切なげな表情に次第に興奮を覚えていた。
 だから俺は黙って彼女を部屋の中へと招き入れていた。



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凄く良い作品ですね。

これは単話になるんですか?

この続き読みたくなる作品ですね。😊

凄く良い作品ですね。

これは単話になるんですか?

この続き読みたくなる作品ですね。😊

Re: 凄く良い作品ですね。

ありがとうございます。
まずは女弁護士でのお話を予定しており、その後に他の住人のお話も増やしてシリーズ化できればと思っております。


是非シリーズ化お願いいたします。

読めるの楽しみにしていますね。(*^^*)
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久遠 真人

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