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潜入諜報員モノ(仮)

別の試し書きの冒頭で、比較的、筆が進んでいる品です。
順調に調理できれば、クッコロ系潜入諜報員モノになる予定です。

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 諜報員である太刀川 火多奈(たちかわ かたな)は、わずかに苛立ちを感じていた。
 常に冷静沈着で数々の潜入任務をこなしてきた彼女は、『アイス・エッジ』の異名で敵味方に恐れられた存在だった。
 中性的な顔立ちの美貌は優雅さと凛々しさを感じさせる。彼女と対峙した者は、その冷たい光を宿す切れ長の目で見つめられると恐怖で心まで凍てつくという。
 そんな火多奈に物怖じせずに妖艶な笑みを浮かべる女が目の前にいた。指に挟んだカードをヒラヒラと振って見せているのは医療スタッフである女医のモニタ=グレースだった。
 濡れたような黒髪の中華系アメリカ人で、白衣の下に大胆なカットの真紅のチャイナドレスを身につけていた。

「ねぇ、なんでこんなモノがここにあったのかしら?」

 モニタが手にしているのは、今いる研究施設のマスターキーであった。

(陽愛が苦労して手に入れてくれたというのに失態だわ)

 同じ諜報機関に所属する根子屋 陽愛(ねこや ひな)は、火多奈を先輩と慕いプライベートでも親しくしている娘だった。
 諜報員としてはまだ経験は浅いが、教官として後進の育成をする火多奈からみても将来が楽しみな逸材だった。小動物のように愛くるしい少女は、訓練生の際も予想を上回る行動力をみせて、指導していた火多奈を何度も驚かしていた。
 今回の任務もすでに1年前から潜入している陽愛からの増員要請に応えたものだった。

『火多奈さん、お帰りなさいッ』

 任務から帰還すると、陽愛は栗髪をなびかせて勢いよく抱きつくと、クリクリと愛くるしい瞳を潤ませる出迎えてくれた。その存在に任務で凍てついた心を解かしてもらっていた。
 そんな少女の姿を思い出すだけで、今もさざ波のように生じていた苛立ちが綺麗に霧散していた。

(幸い人気のない機材置き場、周囲の監視装置は沈黙させてある)

 素早く状況を整理していく。そして、最善策を導きだすと迷わず行動に移す。
冷徹な諜報員は静かな殺意を秘めて、ゆっくりと前へと歩みでるのだった。
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