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ヒトイヌ・マンション ( 管理人バージョン)

冒頭ついでに、新春向けな冒頭も掲載します。
以前、Twitterでやりとりしたヒトイヌマンションがベースで、何パターンか試し書きしたひとつです。

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 桜の吹雪が舞う中、俺は新居兼仕事場となるマンションの前に立っていた。
 目の前に建っているのは円柱状の独特な外観をしたマンションで、高さは五階程度と高くないが横に広い印象を受ける。
 広い駐車場の真ん中にドンと建っている様は、小さな野球場をイメージしたら分かりやすいだろう。

「思ってた以上に豪華な造りだな……大学でたての俺なんかが本当に管理人でいいのかよ」

 先日まで地方の三流大学に通っていた俺の元に、急逝した祖父の弁護士だという美女がやってきたのが半年前だった。
 二十代後半と弁護士としては若い女性だったが、無駄のない動作からも有能なのがわかった。
 ただ端整な顔立ちで隙のない感じから、少し近寄りがたい雰囲気をもっているのが残念だった。
 その彼女の話では、父方の祖父がこの俺に財産を遺してくれていたということだった。
 だが、両親は祖父のことを嫌っており長い間連絡すらとっていなかった。同然、俺自身も会った記憶もない人物で、正直に言えば祖父と言われても顔も思い出せずにいた。
 とはいえ、財産が貰えると聞かされれば興味を惹かれてしまうのは当然だろう。だが、彼女から聞かされたものは、俺のイメージしていたものとは少々異なるものだった。
 遺産の内容は、マンション一棟とその周辺の結構広い土地で、地方都市の郊外に建つとはいえ売ればかなりの額になるものだった。
 売らないにしても月々の家賃や管理費だけでも結構な収入で、就職しないでも裕福な生活を過ごせそうだった。
 だが、もちろん甘い話には裏があり、この遺産を受け取るにも条件があった。

「マンションに住み込みで二十四時間三百六十五日の間、管理人をするのが必須条件。その間にマンション外から人を入れるのも雇うのは厳禁。一年の間に住人全員から認められないと遺産を受け継ぐ権利はなしと判断されて全て没収って……随分と一方的でガチガチな条件だなぁ、軟禁状態で休みなく働くって、どんな罰ゲームだよ」
「嫌でしたら辞退していただいても結構です。ただし、じょうけんを満たせして正式に遺産を引き継がれたら、あとは売却されるのも貴方様の自由です」

 美女弁護士が意味ありげに微笑むのが妙に気になったが、就職活動が難航していた俺には目の前で提示された家賃収入が魅力的すぎた。

(一年間だけ頑張れば、あとは代わりの人を雇って、家賃収入生活で悠々自適なライフが待っている)

 そんな目論見のもと、俺は彼女が提示した条件を飲むことにした。

『ヴィラ・シャルダン・犬飼』

 それが目の前のマンションの名前だ。「フランス語で小さな庭を意味する」と美女弁護士は説明してくれていた。
 驚いたことに彼女も住人のひとりで、最上階に住む関貫 静香(かんぬき しずか)だった。
 俺が到着した頃には引っ越し作業は終わっており、彼女は俺に鍵を渡すと早々に自室へと戻っていってしまった。

「なんだろう、ソワソワして落ち着かない様子だったけど……まぁ、いいか」

 俺も多くない荷物の整理のため、厳重なセキュリティを抜けて新居となる管理人室へと向かった。
 一階は管理人室兼俺の住居の他は共有スペースとなっていた。フロアは天井の高い豪華な造りで、大理石の床に深紅の絨毯がひかれている様は、さながら高級ホテルのようであった。
 圧巻なのがマンション中央を貫く吹き抜けで、天窓に配置されたミラーがAI制御で太陽光を降り注がせていた。
 その吹き抜けの周囲に螺旋状に配置されたスロープがあり、随分とバリアフリーが行き届いている印象だった。
 吹き抜けの床部分は強化ガラスになっていて、その下には地下庭園まで備えてあった。

「あら、新しい管理人さん?」

 不意に声を掛けられて振り向くと、そこにはテレビで見慣れた女性が立っていた。
 今もっとも人気のある若手ニュースキャスターの五十嵐 楓子(いがらし ふうこ)だった。
 国立大学の経済学部を首席で卒業した才媛で、在学中はミスキャンパスに輝き、モデルとしても活躍したこともある女性だった。
 輝かんばかりの美貌に圧倒されていると、ジロジロと俺を見詰めて値踏みしているいうだった。

「まぁ、外見はギリギリ合格かな。あとは働き次第よね。ねぇ、来週末にでもドッグランを予約したいの、あとリクエストを入力しておくから、よろしくね」

 それだけ言い放つと、スタスタと正面ゲートから外出していった。颯爽と去っていく後ろ姿だけでも見惚れるには充分の価値があった。

「……ドッグラン? 地下庭園のことかな?」

 業務に関しては祖父が残した資料があるという話だった。管理人室に入った俺は、祖父が使っていた書斎を漁り、そこに残されたファイルを端から目を通すことにした。
 祖父は随分と几帳面な人物だったらしく、戸棚に整頓されたファイルが隙間なく並んでいた。
 その中から住人名簿を見つけて手に取ってみた。
 そこには住人の写真入りで詳細な情報が書かれていたのだが、どの入居者も美人ばかりで女優やモデルなど職業もそうそうたるもので圧倒された。
 ただ、そこに書かれている情報に目を通していった俺は、すぐに眉をひそめることとなった。
 各住人のスリーサイズや食の好みなどが書かれているのはまだわかる。会話などしているうちに知ることがあるかもしれない。
 だが、性癖や快楽のツボ、男性経歴まで事細かに書かれていると、もう犯罪の匂いしかしなかった。
 そこにはもちろん、あの美女弁護士の情報もあり、駄目だと思いつつも読んでしまっていた。

504号室住人 関貫 静香。28歳独身。
重度のマゾヒストで物扱いされ、貶められることでマゾのスイッチが入る。
性感帯は乳首とアナル。特にアナルを責められるのが大好きで、浣腸の後に責めると潮を吹いて泣いて喜ぶ。
貞操帯の愛好家で、鍵はSIZU-03として管理。
月末に家賃を手渡しされる時に清掃と施錠確認を必ず行う。
首輪をしているのが要求サインである為、その場合は事前に登録されたリクエストを実行した後に、中庭にて四十八時間のヒトイヌ管理にて牝犬扱いをすること(リクエスト、飼育方法の詳細はそれぞれ管理サーバーの情報を参照)。
尚、乳首にピアスを使用している為、スーツ着用の際は引っ掛けないように注意すること。

 そんな事が書かれているのだが、クールビューティーを絵にかいたような美女がマゾヒストだとは、にわかに信じられなかった。
 だが、それが事実だとすぐにわかることとなった。

ーーピンポン

 呼び鈴が押されて玄関を開けると、そこには関貫 静香が立っていた。
 先程までと同じストライプ柄のスーツ姿で手には封筒を持っていた。
 家賃が入っていると言われて差し出された封筒を玄関先で受け取ったのだが、それでも彼女が立ち去る気配がなかった。
 少し俯き加減の彼女は、なにかを期待する眼差しを向けていた。なぜか耳が赤く染まっており、腰を左右に揺らしているのがわかる。
そんな彼女の首筋に、赤い首輪がはめられていることにようやく気がついた。

(おいおい、まさか、あれに書かれていたのは本当なのか?)

 今の状況に戸惑ってしまう俺だが、クールな美女が見せる切なげな表情に次第に興奮を覚えていた。
 だから俺は黙って彼女を部屋の中へと招き入れていた。



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姦獄島

書いて詰まると、息抜きに別のを書くといういつものパターンですが、またファイルがクラッシュしないうちに冒頭だけでもアップしておきます。

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 その応接室は、手狭ではあるがよく清掃が行き届き、質素な内装を生け花が彩っていた。
 主の女性らしさを感じさせる場所であったが、今は険悪な雰囲気に包まれていた。

「あなた方とお話することはありません、お帰りください」

 鈴の音の如く澄んで、よく通る声が応接室に響いた。その声の主は、ダークグレーのスーツを着込んだ女性だ。
 襟元に付けられたバッジから弁護士だとわかるのだが、その美しい容姿は女優と紹介されても納得してしまいそうだった。
 ワンレングスにセットされた栗色の髪。その合間から覗く端麗な顔立ち。まっすぐ相手を見据える瞳は、澄んだ湖のように透明感があり、そこには強い意思の光が宿っていた。
 三十路前というのに瑞々しい柔肌は十代の小娘のようで、それでいてスッと通った高い鼻筋に貴族的な高貴さを感じさせ、やや厚みをもった唇から大人の色気を漂わせている。
 ボディも美貌に劣らないものだった。スーツの上着では隠しきれないHカップの膨らみに腰は驚くほど括れており、逆にタイトスカートにおさめられたヒップは、はち切れんばかりの迫力だ。
 黒タイツに包まれた長い美脚といい、隅々まで男の欲望を刺激する官能み溢れるボディだった。

「まぁまぁ、水沢(みずさわ)先生もそう言わずに、折角、龍鱗会さんの方から提案してくらはるんやから、話だけでも聞いてもらえんやろうか」

 テーブルを挟んで座るのは二人の男たちだ。
 ひとりは、瀬名と同じく弁護士のバッジを付けた中年親父で、名は舐筑 司太郎(なめつく したろう)という。
 この街でも古参の弁護士で実力もあるのだが、いろいろと悪名高く、悪い噂も絶えない男だった。
 暑くもないのに扇子をパタパタと扇ぎながら、特徴的な大きなタラコ唇を動かしては瀬名を説得していた。その一方で、正面の魅惑のボディを舐めるように見ていて、瀬名を視姦されている嫌な気分にさせていた。
 その脇に座っているもうひとりは、平目顔をした巨漢の男だ。
 イタリア製の上等なスーツを着ているが、男が全身から溢れださせる凶悪さを誤魔化すことはできない。時折、厚い唇の隙間からギザギザの歯を見せられると深海魚に襲われる小魚の気分にさせられる。
 その男こそ、この地方都市に古くから影響をもつ龍鱗会の幹部であり、色街を取り仕切る鱶咬 凍次(ふかがみ とうじ)であった。
 その街には陸地から一キロも離れていない距離に切り立った岩山のような小さな島があった。戦争末期まで思想犯の収容施設があった場所で、終戦で施設が封鎖となった跡を戦後のどさぐさに龍爪会が手に入れ、色街へと改造していた。
 岩山をくり貫いた通路が縦横無尽に走り、さらがな蟻塚のようになっている。そこにはバーやキャバレーなど飲食店や風俗店がところ狭しと入っていた。
 その中には非合法な店もあるらしく、時折問題視されていたが、そのたびに抗議は絶ち消えになり、うやむやにされてきた。
 だが、最近になって島のどこかに残る収容施設跡に女性が監禁されて性奴隷のように扱われていると噂になり、ネットでは『監獄島』や『姦獄島』などと呼ばれていた。
 その噂の真偽を確かめるべく、抗議団体が調査に乗り出しており、その主要メンバーのひとりが、この弁護士事務所の所長でもある水沢 瀬名(みずさわ せな)であった。

「あぁ、もういいよ。舐筑先生。顧問弁護士のアンタにわざわざ骨を折ってもらったが、穏便に進めようとしても無駄だったようだな」
「せやかて……」
「前もって言っておきますが、私や他のメンバーも脅しには屈しませんからね」

 相手が誰であろうと凛とした佇まいで、ピシャリといい放つ。その気迫に厚顔で有名な舐筑も圧倒されてしまう。
 だが、鱶咬は違った。腫れぼったい瞼に隠れる眼差しにギラリと殺意を浮かばせる。そこには彼が束ねる荒くれ者たちがひと睨みで黙るだけの迫力があった。
 全身から放たれる狂暴さの気配に、舐筑は猛獣と同じ檻に入れられている気分にさせられていた。冷や汗が吹き出して、身体が恐怖で震えだしそうだった。
 だが、対峙する水絵は正面からその眼光を受け止めていた。それどころか強い意思をもって押し返さんばかりの気迫だった。
 緊迫する空気の中、先に降りたのは鱶咬だった。

「いやぁ、まいった、まいった。お見逸れしました」
「……鱶咬はん、どないしたんや?」

 深々と頭を下げる鱶咬に、武闘派で恐れられる彼を知る舐筑は戸惑いを覚えていた。

「非業の死を遂げた亡き夫のあとを継いだ抗議派の美人弁護士……ちょいと脅せばと思っておりましたが、予想以上に覚悟がおありのようだ。今日のところはこれで失礼して、改めて会いに伺いますわ」

 それだけ言うと、鱶咬は返事もまたずに席を立つと早々に応接室を出ていこうとする。すると扉の向こうに待ち構える人物がいた。
 女子大生だろう。まだ少女らしさが残るサラサラな髪質のショートボブの女性で、ボーイッシュな雰囲気にパンツルックがよく似合っていた。
 引き締まり健康美溢れる肢体は、女性として脂ののった瀬名とは違う魅力をがあった。おもわず値踏みをする鱶咬の冷たい視線に、勝ち気な美貌に嫌悪の表情を浮かべてギッと睨みつけてくる。
 瀬名の夫であった水沢 正志(みずさわ まさし)の妹の水沢 瑠奈(みずさわ るな)であった。
 瀬名の義理の妹にあたる二十歳の彼女は、県外の大学に通う女子大生であった。

「アタシたちの答えは変わらないわ、しつこくまた来るって言うのなら、ここでアタシがぶちのめしてあげるわッ」

 そう告げると腰を落として空手の構えをとってくる。腕に自信があるらしく巨漢の鱶咬を前にしても気後れする様子もない。

「ほぅ、威勢の良いむすめさんだな……そうか、水沢の妹か、あのガキがいい女になったじゃねぇか」
「くッ、いやらしい目で見るなッ」

 瑠奈が怒りのまかせて正拳を繰り出す。それを鱶咬はキャッチャーミットのような肉厚な掌で受け止めた。

「ほぅ、いいパンチだな、鍛練も積んでるようだ……だが、軽いな」
「このぉ、放せッ」

 受け止められた拳の握られた瑠奈は、今度は蹴り技移行しようとする。だが、それを瀬名の声が止めた。

「瑠奈ちゃん、止めなさいッ」
「瀬名さん、だってコイツはお兄さんの……」
「証拠はないわ、それに暴力では何も解決しないが、あの人の口癖だったでしょう?」

 瀬名の説得に瑠奈から戦意が失われていった。鱶咬もそれを確認すると握っていた瑠奈の拳を手放した。
 それにホッとすると瀬名は、鱶咬へと頭を下げる。

「鱶咬さん、今回の暴力の件は改めて謝罪させていただきます。ですが、何度こられても私たちの考えは変わりません」
「頑固なところは夫婦揃ってそっくりだな……次会うときも、そう言えるか愉しみにしているよ」

 そう言い残すと、鱶咬はその場をあとにする。
弁護士事務所が入居するビルを出ると待機させていたベンツへと乗り込んだ。
 それに遅れて舐筑が到着すると、車は静かに走り出した。

「もぅ、急にどないしたんや、鱶咬はん……なんや、笑ってるんか?」
「あぁ、つい我慢できなくてなぁ、ありゃ、先生の言うとおり、俺好みのイイ牝だな……それに妹の方もジャジャ馬で躾がいがある」

 鱶咬は自分好みの女をみると、込み上げる嗜虐欲が昂りすぎて笑みが抑えられなくなるのだった。
 ニタリと笑みを浮かべてギザギザの歯をみせる姿は、獲物を前にした捕食者だった。鱶咬から滲み出る凶悪さに、付き合いが長い舐筑でもゾッと寒気がしてしまう。

「そんなに気に入ってくれはって良かったわ。いつもみたいに早々に海に沈められちゃ、勿体ないからなぁ」
「あぁ、あの美人の弁護士先生には、ぜひ招待してあの島の素晴らしさを体験してもらいたいものだな」
「だがなぁ、拐って監禁ってわけにもいかんでぇ、いろいろ注目させてる方やし、夫の時も失敗しとるからな」

 瀬名は元々は東京で活躍する美人弁護士であった。
 当時は大手弁護士事務所に所属していた彼女は、新人の際に指導してくれた先輩の正志と恋仲になっていた。
 その後、結婚したふたりは彼の父親が残してくれた弁護士事務所を受け継ぐ為に、三年前にこの街へと移り住んで、まだ高校生だった妹の瑠奈と三人で暮らしはじめた。
 小さな弁護士事務所であったが、親身な対応から地元民からの信頼も厚く、当然、地元に巣食う龍爪会から被害を受ける人々の相談も多かった。
 矢面に立ち、毅然とした態度で被害者を守る正志は、色街に抗議する団体とともに龍爪会と対峙するようになっていった。
 その正志だが、雨が激しく降る日に行方不明となり、数日後に水死体となって運河で発見された。その身体には激しい暴行の痕があり、腫れ上がった顔は人相での確認が困難なほどであった。
 数日してヤク中の男が実行犯として逮捕されたが、すぐに留置場で急死してしまった。それで捜査も打ち切られてしまい、真相は闇の中へと消えてしまったが、誰もが龍鱗会の仕業だと確信していた。
 更なる報復を恐れてメンバーが次々と去っていった。このまま抗議運動は尻窄みになると思われていた。
 だが、瀬名が亡き夫の意思を継いだことで、事態は一転する。マスコミが悲劇のヒロインとして取り上げ、抗議運動自体も注目を浴びたのだ。
 そうなると龍爪会もおいそれと手出しができなくなり、結果的に抗議運動を勢いづけてしまったのだった。
 その事を指摘されて鱶咬も渋い顔を浮かべる。

「ほな、こないな手はどうや?」

 舐筑の提案に耳を傾けた鱶咬は、ニヤリと笑みを浮かべると徐々にそれを深めていった。





ふたなりな・・・

 更新できてないので、以前にもアップした気もしますが倉で眠っていた没作品の冒頭でも貼っておきます。
 以前、参加したフタナリ企画物で書き進めていた品なのですが、もう一品の方が良いとの判断で倉入りした経緯があるものです。
 ウチでのフタナリ需要は、あるのか不明なので埃を被っておりました。
 ところで少女&フタナリの場合は、百合需要を満たせるのか興味深いところでもあります(苦笑)。

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『双性牢烙(そうせいろうらく)』

【1】

 深紅の絨毯のひき詰められた広々とした室内、そこは鳳星学院の運営を司る執行部本部にある生徒会長執務室。
 壁一面を使用した大きな窓からは学院の広大な敷地内が見渡せる。その窓の前に置かれたオーク材の執務机に、生徒会長である猩々緋 令華(ほうじょうひ れいか)の姿があった。
 女性にしては長身でスラリとしたモデル体形、美しい艶に彩られた長い黒髪と切れ長の瞳が印象的な美少女だ。背後から差し込む夕陽を浴びて、その怜悧な美貌は神々しくすら見えた。
 報告書のファイルに目を通していた令華は、入り口の向こうで騒ぎが起こっているのに気が付く。徐々に近づいてくる靴音の荒々しさから、その原因となった人物の様子が容易に想像できた。
 クスリと意地の悪い笑みを浮かべると、ファイルを閉じてデスクの上に置いた。
 それと同時に執務室の扉が荒々しく開け放たれ、生徒会役員たちの制止を振り切った、ひとりの少女が姿を現した。
 小柄な身体に鳳星女学園の制服である濃紺のブレザーをまとい、身に着けているリボンの色から一年生だとわかる。
 腰までありそうな長髪をポニーテルにまとめ、キッと令華を睨みつけるア-モンド型の目には意思の強そうな光を宿している。吊り上がりぎみの柳眉が、少女の勝気そうな印象をより強めていた。
 芸術的な美しさを感じさせる令華とは対照的な、野性的な美しさを感じさせる美少女である。

「入室の際は、ノックをするのが礼儀ですわよ、鐵 火憐(くろがね かれん)さん」
「あぁ、そうね。次から気を付けるわよ。それより、アタシが何しに来たかわかってるわよねぇ」

 火憐と呼ばれた少女は怒り心頭といった様子で。執務机の前までくると令華を見下ろす。

「さぁ、なんのことかしら」
「このぉッ」

 火憐と呼ばれた少女は、トボけてみせる令華に激昂する。バンと激しい音を立てて執務机に手をつく。
 慌てて止めに入ろうとする生徒会役員たちを令華は手で静止すると、しばらく席を外すように指示をだした。
 心配そうにする全員が部屋を出ていくのを確認すると、ようやく令華は口をひらいた。

「冗談よ、新郷 響(そんざと ひびき)さんの件でよいかしら?」
「響が連れていかれたのは、やっぱり貴女の差し金なのね」

 幼馴染で親友である響が授業中に生徒会に呼び出されたまま帰ってこないとクラスメートに教えられ、すぐさま怒鳴りこんできた火憐であった。

「アタシに負けたのがそんなに気に入らないの? 響になにかしたら許さないんだからッ!!」

 火憐の啖呵に令華の眉がピクリと反応する。だがそれも一瞬で、口元には再び冷笑が浮かぶ。

「ちょっと調べものに協力して頂いてるだけよ」

 怒りで肩を震わせて今にも殴り掛からんばかりの火憐と余裕の笑みを浮かべる令華。
 ふたりの少女の確執は3カ月前――鐵 火憐がこの鳳星女学園へと転校してきた時から始まっていた。



 鳳星学園は、戦後の混乱期に裸一貫から製造業を始め、今では赤ちゃんのオムツから軍艦まで扱う巨大企業体、猩々緋グループを作り上げた人物が創設した学園だ。
 猩々緋グループからの多大な支援によって設備は充実しており、街から離れた郊外に広大な敷地を擁している。最新最高の教育と静かな環境で学園生活を過ごせるのもあり裕福層の女子が多いのが特徴だ。
 また、帝王学を学んだ将来の創業者を育成するという設立当初からの方針により、学内の運営の大半を生徒たち主導で行われていた。結果、それを統括する生徒会は強い権力を持っていた。
 そんな学園に、二学期も始まった9月下旬にふたりの女生徒、火憐と響が高等部へと転校してきたのだ。
 裕福層の生徒が多い学園とはいえ、それでもガラの悪い生徒はいる。勝気な性格の火憐は、そんな連中とすぐにトラブルを起こしていた。
 その大半が気の弱い響を守ろうとしての行為であったのだが、すぐに手を出してしまう火憐にも問題があった。
 次第にエスカレートしていく嫌がらせを、持ち前の空手で強引にねじ伏せていった。
 響の祖父が開く道場は実戦的な空手を教えることで県下で有名で、多くの警察や軍関係者が子弟として通っているほどであった。
 そこで火憐は幼少の頃から鍛えられてきたというのだから、その実力も伺える。
 だが、ことが大事になると流石に生徒会も動き出した。騒動の鎮圧に風紀委員を引き連れた令華であったが、ちょっとした行き違いにより火憐と対峙することとなった。
 学業だけでなくスポーツ、武道でも負けを知らぬ令華であった。だが、観衆の目の前でアッサリと火憐に負けてしまったのだった。

――それから令華様は変わられてしまった……

 令華の腹心である生徒会役員たちはそう感じていた。
 猩々緋の血族として幼少の頃より人より優秀であることを求められ続けた。それに常に応えてきた令華にとって、同性で年下の火憐に負けた事は受け入れがたい事であった。
 それでも負けた事実は変わらず、受け入れようと努力していた。だが、偶然目にした火憐に関する個人資料をみてしまい、それも出来なくなってしまった。
 それ以来、一般生徒に見せる優しい笑みの下で、ドロドロとした昏い感情が渦巻き、次第に大きくなっていたのだった。



 睨み合い、火花を散らすふたりの少女。先に目を外したのは令華であった。

「ふッ、ちょうど良かったわ。ちょっと見てもらいたいものがあるの」
「はぁ、なによ?」

 無造作に火憐の手元に置かれた茶色い封筒、その中身は数枚の写真であった。

「昨日、私の元に届いたものよ。なかなか興味深いものが写っているわ」
「なにを一体……えッ、これって……」

 写真に映っているのは火憐の姿だった。寮の私室を盗撮したものらしく、ちょうど部屋に設えられたシャワーを使用するところだった。
 制服を脱いで、あられもない下着姿になる火憐がシャワー室に入り、濡れた身体で出てくるまでの様子が写っている。

「こ、これを誰がッ!?」
「問題はそこではないわ。ほら、この写真なんてシッカリ写ってるわよね、とても不思議なものがね」

 令華の細く綺麗な指が、一枚の写真を指差す。その写真には裸で姿見の前に立つ姿を捉えていた。
 鏡に映るその股間には、あるはずのないものが写っていた。慎ましい柔毛の下でダラリと垂れ下がる器官だ。

「これって、男性の性器……ぺニスよね?」

 そう、胸の膨らみや括れた腰など早熟な女性らしい丸みを帯びた身体つきの火憐。その股間には本来はありえない男根が存在していたのだ。
 その異物感はすさまじく、彼女が可憐な美少女なのがそれを増している。
 問われた火憐は写真を見下ろしたまま動かない。先程までの強気の様子は消え去り、顔からは血の気がひいていた。
 その様子に乾いた笑みを浮かべた令華は、椅子から立ち上がるとゆっくりと背後へと歩んでいった。

女怪盗モノ・・・

書いてる間の口直しで、ネタのメモ代わりに書いた冒頭試し書きを、記録がてら張り付けておきます。

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 月明かりもない深夜のコンテナ埠頭。
 昼は多くの労働者で賑わう区画も、夜は静まり返り、わずかに聴こえるのは波の音だけだ。
 入り口のゲートは固く閉ざされ、人の気配も感じられない。そんな場所へと一台のバイクがやって来た。
 レーサータイプのマシンから降り立ったのは、漆黒のヘルメットとレーサースーツに身を包んだ人物だ。
 身長は170センチ近いだろう。レザー素材が浮き出させている長身のボディラインから女だとわかる。
 高々と突き出された豊かなバストの膨らみに極限までキュッとしまったウェスト、そこから反った先にある量感あるヒップとムッチリした太ももへと流れるラインのなんと美しいことか。全身から男を惹きつけて止まない妖しい色香を漂わせている。
 それはヘルメットの下から現れた美貌にも言えたことだった。
 ミディアムボブにセットされた栗色の髪を、かき上げて現れたのは強い意思を感じさせる太めの眉と切れ長の目。薄く黄色かかった瞳は爛々と輝き、獲物を狙う黒豹を思わせる。
 その一方でスッと通った鼻筋にピンクのリップをひかれた厚めの唇。そこから覗く白い歯を見ていると思わず吸い付きたくなるほど魅惑的なのだ。
 まるで男を惑わす美を体現したような女がそこにいた。
 女は鉄製のゲートに近づくと軽々と乗り越え、音もなく奥へと進んでいく。その足取りに迷いはなく、的確に物陰を選んで闇と完全に同化していた。
 巨大なコンテナが整然と積まれたコンテナヤードを抜けると巨大なガントリークレーンへと登っていく。
 その間、女は息切れした様子もみせず、高台まで到着すると腹這いになって前方を見据える。
 視線をそのままに右手がレーサースーツのファスナーを下げていく。双乳がつくる深い谷間が現れ、そこから狙撃用のスコープを引き出して覗いた。
 女が見据えていたのは、停泊している貨物船の甲板であった。

(……いたッ)

 女の視界に入ったのは厳つい男たちを従えた恰幅のよい老人。服装から大陸の人間だとわかる。
 そして、老人が話し掛けているのは仲介人らしきバーコード頭の中年男。その後ろに白髪の男が立っている。
 そちらは30、40代だろうか、ひどく痩せ細っていて長い手足は針金のようだ。丸レンズのサングラスで表情が読めないが、病的に白い顔は頬が痩け、眉間に刻まれた深い皺から気難しい性格が伺える。

(……金は……いくらでも……だす……だから……ぜひ……作品を……売って……くれないか……)

 女は視界に入る老人の唇の動きから会話を読み取っていた。
 それが正しいのは老人の背後にいる男たちが、手にしていたケースを開けて宝石や金塊を提示したことでわかる。
 だが、交渉は難航しているようで、老人が次々と報酬を提示しても白髪の男は首を縦には振らない。
 徐々に老人が焦りだす一方で、その後ろで控える男たちは苛立ちはじめていた。
 懐に手を入れて威嚇しようとするのだが、慌てて老人が諌める一幕があった。
 すると男の方から、なにか提案があったようだ。それは奇妙な内容だったらしく、怪訝な表情を浮かべる老人の様子から推測できる。
 すぐに老人が指示だすと、背後で控えていた男たちが慌ただしく動き出す。配下らしい大勢の男たちが、タラップを使って港へと駆け降りてくるのが見えた。

(……え……まさか)

 慌てて甲板へと視線を戻すと、白髪の男がこちらを向いていた。

ーーゾクリッ

 男は、まるで女が見えているかのように、ニタリと不気味に笑っていた。
 まるで悪鬼のような笑みに、女は悪寒を感じてしまう。
 だが、状況を理解すると、その後の行動は早かった。

「ふぅ……今夜は、ここまでのようね」

 船の方から険しい顔した大勢の男たちが駆け寄ってくるのが見える。
 立ち上がった女は不敵に笑って見下ろすと、20メートルはある高さから無造作に飛び降りた。
 頭から自然落下する女の姿が、迫る男たちからも視認できた。予想外のことにギョッとして足を止めてしまっていた。
 だが、空中で女が打ち出したワイヤーが別のクレーンへと打ち込まれると、落下していた動きが変わった。
 振り子のように弧を描き、地面スレスレで上昇を開始する。まるでスパイダーマンのように宙でワイヤーを外した女は、そのままコンテナの向こうへと消えていった。
 サーカスの軽業師のごとき女の動きに、強面の男たちも、しばし唖然してしまう。我にかえって追いかけた時には既に遅く、女の姿はどこにも見当たらなかった。

潜入諜報員モノ(仮)

別の試し書きの冒頭で、比較的、筆が進んでいる品です。
順調に調理できれば、クッコロ系潜入諜報員モノになる予定です。

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 諜報員である太刀川 火多奈(たちかわ かたな)は、わずかに苛立ちを感じていた。
 常に冷静沈着で数々の潜入任務をこなしてきた彼女は、『アイス・エッジ』の異名で敵味方に恐れられた存在だった。
 中性的な顔立ちの美貌は優雅さと凛々しさを感じさせる。彼女と対峙した者は、その冷たい光を宿す切れ長の目で見つめられると恐怖で心まで凍てつくという。
 そんな火多奈に物怖じせずに妖艶な笑みを浮かべる女が目の前にいた。指に挟んだカードをヒラヒラと振って見せているのは医療スタッフである女医のモニタ=グレースだった。
 濡れたような黒髪の中華系アメリカ人で、白衣の下に大胆なカットの真紅のチャイナドレスを身につけていた。

「ねぇ、なんでこんなモノがここにあったのかしら?」

 モニタが手にしているのは、今いる研究施設のマスターキーであった。

(陽愛が苦労して手に入れてくれたというのに失態だわ)

 同じ諜報機関に所属する根子屋 陽愛(ねこや ひな)は、火多奈を先輩と慕いプライベートでも親しくしている娘だった。
 諜報員としてはまだ経験は浅いが、教官として後進の育成をする火多奈からみても将来が楽しみな逸材だった。小動物のように愛くるしい少女は、訓練生の際も予想を上回る行動力をみせて、指導していた火多奈を何度も驚かしていた。
 今回の任務もすでに1年前から潜入している陽愛からの増員要請に応えたものだった。

『火多奈さん、お帰りなさいッ』

 任務から帰還すると、陽愛は栗髪をなびかせて勢いよく抱きつくと、クリクリと愛くるしい瞳を潤ませる出迎えてくれた。その存在に任務で凍てついた心を解かしてもらっていた。
 そんな少女の姿を思い出すだけで、今もさざ波のように生じていた苛立ちが綺麗に霧散していた。

(幸い人気のない機材置き場、周囲の監視装置は沈黙させてある)

 素早く状況を整理していく。そして、最善策を導きだすと迷わず行動に移す。
冷徹な諜報員は静かな殺意を秘めて、ゆっくりと前へと歩みでるのだった。
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久遠 真人

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